ストレンジ・デイズ
The Fillms、その他神戸を中心に活動するバンドでドラムを叩いている三木健弘のブログ
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ワラシィのさくぶん 二本目
私がその「絵」に出会ったのは、三十一歳の時だった。
親がやっていた古物商と遺産を引き継いで、私は毎日を道楽、なんにも考えずに暮らしていた。
ある日、私の店に、老人が一枚の絵を持ち込んできた。
私は絵画には疎い。だが、被せられた白い布が取り払われた時、私は息を飲んだ。
宝石を散りばめたような、広がる海の上に沈みゆく太陽、その残光。
手にとることさえできると思わせる、砂浜のタッチと、そこに揺れる名前の分からない、青々とした樹木。
そして、その風景の中心に据えられた少女。
短く切り揃えられたブロンドの髪が、微かに風で靡いている。遠くを見る鋭い眼差しとは対称的に、幼さの残る輪郭。唇は、一流のパティシエによって盛りつけられた、特別な苺のように、燦然と、美しく、その存在を示している。
私は、魂を奪われてしまった。一枚の、瞬間を切り取ったとしかいえない、戦慄すら感じさせる画家の手腕と、少女に。
私はすぐに、この「絵」を買い取った。
そして、これが私の人生を狂わせた……いや、そうじゃない。この「絵」だけが、私の人生になってしまったのだ。

私は、一日中飽きることなく、絵を眺め続けた。仕事なんてしなくても、結婚も、ましてや恋愛すらしたことのない人間だ、遺産があれば喰っていけた。
世間では、「オタク」という言葉が流行っていた。アニメやゲームの少女に恋をするらしい。
私はオタクなのだろうか。そうは思わなかった。
私はこの「絵」の少女を、誰とも共有したくはなかったし、アニメやゲームのように、未来が限定されていない所が好きだった。
アニメやゲームでは、情報が無理にでも与えられてしまう。性格、好きなタイプ、好きな食べ物……。
この「絵」には、一切の情報がない(持ち込んだ老人に電話をかけたのだが、繋がらなかった)。
つまり、私と少女の間には可能性が無限に広がっているのだ。
「絵」を眺めて、私は毎日違うストーリーを組み上げた。それだけが私の人生だった。

今、私は末期ガンで入院している。鎮痛剤さえ射ってもらえば、あとは夢うつつで、病室に持ち込んだ「絵」を眺めて、眠っている。
私の人生はなんだったのだろう。私という個人の意志は無く、ただ「絵」を眺めるためだけに生きていた。
これでは、「絵」の人生であって、私の人生ではないのじゃないか?

それでも、と思い、薄目を開ける。

少し色褪せた夏に、永遠に閉じ込められた少女。

私は、幸せだったと思う。
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ワラシィのさくぶん
じとじとと雨が降っていて、ああ、五月なのだな、と私は、紫陽花と、濡れながらそこを這う蝸牛を眺めていた。古い茶屋の長椅子に腰掛けながら。
微かな霧がうっすらとかかる向こうには、山、山、山。
薫る緑に囲まれて(私が)、(いつの間にか)砂利道を牛車が走っている。
長閑な田舎の風景。
きっとこの山間には、幾つもの澄んだ川が流れていて、それが私のいた町の地下に染み渡り、井戸になって汲み上げられたりもするのだろうな、と思う。
煙草をふかしながら、紫煙が少し曇った空に消えていくのを眺めていると、隣で女の声。
「ばたぁみたいに、溶けてゆくのですね」
聞き慣れない言葉に、私は視線をそちらに向ける。
深く被った麦藁帽子から、ちらりと覗く朱の唇、対比する、雪を散りばめたような、白い顎と首筋。
それは私に、戦火を想起させた。
「ばたぁ?」私は、一先ず相槌をうった。
「ええ。西洋の、何と言ったらよろしいのでしょうか、とにかく、甘くて、素晴らしい調味料です」
「なるほど。それは溶けるものなのか?」
「ええ。氷のように。暑さによって。……或いは時間の針のように」何が可笑しいのか、女はくすりと笑う。
時間?
「難しい例えを使う人だな」
「いえ。主観的であるか、客観的であるか、ただそれだけで如何様にも変化する、という、簡単な理屈でございます」
茶葉のように小さく群れた鳥達が、柔らかく空を横切った。
(沈黙)





公民館の近く。五月。抜けるような美しい青空。俺は何を言えばいいのか。春の白い月の下。昨日降った雨で、微かに濡れたベンチに腰かけながら。
「まさか、こんなところで出会うなんてね」
俺は相槌をうとうとして、言う。
「俺は……」
頭の中で、無数の言葉が溺死する。正しく伝えることのできないまま(だけど何を?)、俺は今日まで来てしまったのだ。
歳は取った。しかし、こんなままで、一体どこが歳を取ったのだろう。
「主観的な時間が溶けてる」
「バターみたいに?」
意外な比喩に、俺は視線をそちらに向けた。
二年前と変わらない、朱色の唇、対比する白い肌。
「ダンスホールでのことを、覚えてる?」
覚えていない。しかし、その言葉は、俺に鮮烈なイメージを焼きつけた。
天井の崩れ落ちた大聖堂。射し込む黄昏。無数の人々。
「……まるで小説みたいなやり取りだ」
「……ねえ、くだらない日々だって、貴方は言うけどさあ」

「    」

打ち消された沈黙。
春の、夢。
ワラシィの読書風月
『悲しき熱帯』について書きだしてから、もらえる拍手が激減しているので、このまま『悲しき熱帯』の批評を続けるか迷っている。
例えば、ジャンプ、サンデー、マガジン、チャンピオンの批評とか。そっちの方が分かりやすいのかな、なんて。

来週まで悩まして下さい。やっぱり、楽しんでもらえなかったら意味はないですから。
ワラシィの読書風月 『悲しき熱帯』2
バイトにバイトにバンドにバンド。文字通り二つ掛け持ちしていて、忙しい。学校行ってた頃より忙しい。しかし、まぁバイトはどうでもいいのだけど、バンドは、面白い話やら、ラジオやら、楽しい瞬間ってのが確実にあって、普段貧乏でも、そういう瞬間を迎えると、生きている意味があるように思えて、また次の日に引っかかることができる。
という壮大な言い訳で、読書から逃げようとしているのだが、やっぱり空いた時間、折角こういうコーナーを持っているんだし、読まなきゃ、本(なんだが町田康みたいな書き方になってしまった)、という訳で、第二回。毎回前フリの方が長い?喧しいわい。
で、早速旅に出たレヴィ=ストロースは船に乗りこむ(色んなトラブルがあるのだが、そこは割愛)のだが、なんと!あの、アンドレ・ブルトンと同じ船に乗るのだ!
アンドレ・ブルトンとは、シュールレアリスムの皇帝であり、自動筆記やらなんやらで『ナジャ』、『溶ける魚』、『狂気の愛』という、訳が分からない本をひたすら書き綴った人で、僕がとても影響を受けた人なのである。羨ましい。
このブルトンについての、レヴィの感想がまた洒落ていて、「毛羽立ったビロードの服を着た彼は、一頭の青い熊のように見えた」という。
しかもこの出会いがきっかけで、二人は手紙で友情を結ぶことになり、ますます羨ましい。
さらに!その手紙のやり取りで二人が論じていた内容が、「審美的に見た美しさというものと絶対的な独創性との関係」!
うーん、羨ましい(←そうか?)!!
(余談だが、ブルトンの名言に、「美とは痙攣的だろう」という言葉があるのだが、この手紙に何か関係しているのだろうか。興味深い)
話は戻って、この船には他に、ロシアの革命家が乗っていたらしいのだが、この革命家について、非常に構造学的な考えを使っていて、面白い。
以下、引用。

「二つの社会の各々が、相互に類似した型の人間を異なった社会的機能を充たすために用いるその用い方を、暗号解読用の格子のようなものを当て嵌めることによって、対応するものの体系として設定することができるとしたら、二つの社会の関係づけはもっと容易になるに違いない。」

つまり、A国とB国に、似たような人間CとC'がいたとする。
しかしA国とB国で、それぞれの役割(職業)が違ったとすれば、そこを解読することによって、A国とB国の関係(特色?)を読み取ることができる、ということだ。

では、また来週。
公式ホームページを更新しました!
スケジュールを更新しました。よろしくお願いします。
毎週水曜日には、ショータローが神戸阪急三宮駅で弾き語りをしますので、是非お立ち寄りの際は、聴いて下さい。
http://thebbbbs.web.fc2.com/




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