ストレンジ・デイズ
The Fillms、その他神戸を中心に活動するバンドでドラムを叩いている三木健弘のブログ
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ワラシィのさくぶん
じとじとと雨が降っていて、ああ、五月なのだな、と私は、紫陽花と、濡れながらそこを這う蝸牛を眺めていた。古い茶屋の長椅子に腰掛けながら。
微かな霧がうっすらとかかる向こうには、山、山、山。
薫る緑に囲まれて(私が)、(いつの間にか)砂利道を牛車が走っている。
長閑な田舎の風景。
きっとこの山間には、幾つもの澄んだ川が流れていて、それが私のいた町の地下に染み渡り、井戸になって汲み上げられたりもするのだろうな、と思う。
煙草をふかしながら、紫煙が少し曇った空に消えていくのを眺めていると、隣で女の声。
「ばたぁみたいに、溶けてゆくのですね」
聞き慣れない言葉に、私は視線をそちらに向ける。
深く被った麦藁帽子から、ちらりと覗く朱の唇、対比する、雪を散りばめたような、白い顎と首筋。
それは私に、戦火を想起させた。
「ばたぁ?」私は、一先ず相槌をうった。
「ええ。西洋の、何と言ったらよろしいのでしょうか、とにかく、甘くて、素晴らしい調味料です」
「なるほど。それは溶けるものなのか?」
「ええ。氷のように。暑さによって。……或いは時間の針のように」何が可笑しいのか、女はくすりと笑う。
時間?
「難しい例えを使う人だな」
「いえ。主観的であるか、客観的であるか、ただそれだけで如何様にも変化する、という、簡単な理屈でございます」
茶葉のように小さく群れた鳥達が、柔らかく空を横切った。
(沈黙)





公民館の近く。五月。抜けるような美しい青空。俺は何を言えばいいのか。春の白い月の下。昨日降った雨で、微かに濡れたベンチに腰かけながら。
「まさか、こんなところで出会うなんてね」
俺は相槌をうとうとして、言う。
「俺は……」
頭の中で、無数の言葉が溺死する。正しく伝えることのできないまま(だけど何を?)、俺は今日まで来てしまったのだ。
歳は取った。しかし、こんなままで、一体どこが歳を取ったのだろう。
「主観的な時間が溶けてる」
「バターみたいに?」
意外な比喩に、俺は視線をそちらに向けた。
二年前と変わらない、朱色の唇、対比する白い肌。
「ダンスホールでのことを、覚えてる?」
覚えていない。しかし、その言葉は、俺に鮮烈なイメージを焼きつけた。
天井の崩れ落ちた大聖堂。射し込む黄昏。無数の人々。
「……まるで小説みたいなやり取りだ」
「……ねえ、くだらない日々だって、貴方は言うけどさあ」

「    」

打ち消された沈黙。
春の、夢。
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